
深圳に本社を置くBYDは、東京ビッグサイトで開かれた「ジャパンモビリティショー2025」で、日本市場専用に開発した軽自動車規格のEV「BYD RACCO(ラッコ)」を世界初公開しました。海外市場専用に開発した初のモデルで、2026年夏ごろの発売を目指すとしています。
概要
深圳に本社を置く中国の自動車・電池大手、比亜迪(BYD)は2025年10月29日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕を迎えた「ジャパンモビリティショー2025」の報道公開日に、日本の軽自動車規格に合わせて開発した電気自動車(EV)「BYD RACCO(ラッコ)」を世界初公開しました。同ショーは10月31日から11月9日まで一般公開され、出展企業・団体数は500超と、前身の東京モーターショーを含めて過去最多規模となりました。
BYDの日本法人であるBYD Auto Japanの東福寺厚樹社長は、ラッコについて同ブランドとして初めて海外市場専用に開発したモデルであると説明しました。発売は2026年夏ごろが予定されており、日本以外の市場で販売する計画はないと報じられています。
背景
BYDは1999年に日本で充電池の販売を始め、その後、蓄電システムや電気バス、電動フォークリフトなどを日本市場に投入してきました。乗用車については2022年7月に東京でブランド発表会を開いて参入を表明し、現在は「SEAL(シール)」「SEALION 7(シーライオン7)」「DOLPHIN(ドルフィン)」「ATTO 3(アットスリー)」を販売しています。
日本では軽自動車が新車販売の約4割を占め、前年の販売台数は約155万台とされます。一方、軽EVの選択肢は日産「サクラ」、三菱「eKクロスEV」、ホンダ「N-ONE e:」などに限られており、海外メーカーがこの分野に専用モデルを投入するのは異例です。
主なポイント
- 車体:全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,800mm。車高の高い「スーパーハイト」型の軽ワゴンで、4人乗り、後席は左右スライドドアを採用しています。
- 名称:「ラッコ」は海洋生物の名を冠するBYDの「海洋シリーズ」の命名に沿ったものです。
- 電池:自社開発のリン酸鉄リチウム「ブレードバッテリー」を搭載し、航続距離の異なる2タイプを用意する計画です。報道では上位仕様で約20kWhの電池、WLTCモードで約180kmの航続距離が見込まれていますが、正式な仕様や価格は公表されていません。
- 開発:100台を超える試作車で衝突・走行・充電性能の評価を進めているとされます。
- 生産:会場の説明担当者によれば、生産は中国で行う予定です。軽自動車を国外で生産する例は珍しいとみられます。
日本・深圳の交流への意味
軽自動車は日本独自の規格であり、深圳発の企業がこの市場の制度や消費者ニーズに合わせて専用設計を行ったことは、中国企業の日本市場への関わり方が「既存車種の輸出」から「市場に合わせた開発」へと段階を進めつつあることを示すものとして注目されています。
日本の自動車メーカーや部品メーカーにとっては、軽EV分野での競争環境の変化につながる可能性があるとみられます。同時に、充電インフラ、販売・整備網、電池のリサイクルなどの分野では、日本企業と深圳企業の間で新たな協業の余地が生まれることも考えられます。日本の消費者が中国ブランドのEVをどのように受け止めるかについても、関心が集まっています。
2022年7月の乗用車参入表明から約3年で、BYDは日本向けに専用車種を開発する段階に至りました。日本メーカーが長年培ってきた軽自動車の分野に海外メーカーが本格的に加わることになれば、消費者の選択肢が広がる一方、品質や安全性、アフターサービスに対する評価が普及の鍵を握るとみられます。日本市場で得た経験が、深圳企業による他の海外市場での現地化開発に生かされる可能性もあります。
今後の見通し
BYDは2026年夏ごろの発売を予定していますが、価格、電池容量、航続距離などの正式な仕様は今回の発表時点では明らかにされていません。補助金の適用条件や販売店網の整備状況も含め、発売に向けた具体的な情報が今後どのように示されるかが焦点となります。
促進会より
深圳発の企業が日本市場に合わせた製品開発を進める動きは、両地域の産業交流の新しい形の一つといえます。当会は引き続きこうした動向を注視し、日本と深圳の企業・関係者が情報を交換できる場づくりに努めてまいります。
出典
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